売上を増やしていって、赤字から黒字になる境目、まさに分岐点のことを損益分岐点とよびます。
新規事業を立ち上げる場合には、「いったいどのくらい売れば黒字になるのか」ということをあらわした数字です。
損益分岐点売上高を計算する前は、わりと気楽に構えていたものの、いざ計算してみると、想像以上に大きな数字が必要であることがわかった、ということもありましたので、新規事業や新店舗を立ち上げる際には、損益分岐点を計算して、それ以上の売上が達成可能かどうか、可能なかぎり精度の高い見通しを立てておかれるとよいでしょう。
また、損益分岐点は、現在黒字の場合に、売上を減らしていって、黒字から赤字になる境目でもありますので、現在の売上高とこの損益分岐点を比較することにより、どの程度赤字になりにくいか(なりやすいか)、ということが分かるようになります。つまり、ちょっとした減収によりすぐに赤字になってしまうのか、それとも多少のことではびくともしないのか、ということです。
損益分岐点が低いほど、赤字になりにくいわけなのですが、そのような体質にするにはどうしたらよいでしょうか?大きくわけて2つあります。
まずひとつ目は、固定費(売上の増減にかかわらず発生する費用)を低く抑える、ということです。たとえば、売上が増えても、既存の人員で対応し、さらに、できるだけ残業しないように、仕事の進め方を工夫する、ですとか、整理・整頓・清潔・清掃をきちんとやって、ムダなスペースをあらたに借りないようにする、ということが考えられます。
ふたつ目は、変動費(売上の増減に応じて増減する費用)の売上に対する比率(変動費率)を低く抑えることです。たとえば、歩留まりを向上させる、ですとか、安くてよいあらたな仕入れ先がないか調査する、などが考えられます。
※ご参考:損益分岐点の計算
費用と売上の関係についてみてみますと、費用は、長期でみますと、どんな費用であれ、売上の増加につれて増加していくものですが、1年などの短期で区切ってみた場合は、売上の増減にかかわらず発生する費用と、売上の増減に応じて増減する費用、に分けることができます。
前者を一定の値(固定費)として、また、後者を売上に比例するもの(変動費)と仮定しますと、利益は次の算式により計算することができます。
利益 | =売上-固定費-変動費 |
=売上-固定費-売上×変動費率 | |
=売上×(1-変動費率)-固定費 |
これは、ちょうど、y=ax+bの一次関数の形になっています。
yが利益、xが売上、aが(1-変動費率)、bが(-固定費)というわけです。
したがいまして、売上がゼロのとき、利益は(-固定費)となり、そこから売上が増えるにしたがって、右肩上がりの直線のグラフになります。
冒頭の、「売上を増やしていって、赤字から黒字になる境目」は、このグラフでいいますと、右肩上がりの直線がX軸(y=0)を通過するポイントです。
というわけで、損益分岐点は、上記の算式に「利益=0」を代入すれば解くことができます。
0=売上×(1-変動費率)-固定費
これを変形しますと、
売上=固定費/(1-変動費率)となります。
この「固定費/(1-変動費率)」が損益分岐点です。
ちなみに、(1-変動費率)のことを「限界利益率」といいます。
「限界」というのは微分のことで、上記のy=ax+bを微分しますとdy/dx=aすなわち(1-変動費率)となりますから、このようなネーミングがなされているものと思われます。意味合いとしましては、売上が1円増えたら利益はどれだけ増えるか、ということです。以上、ご参考まで。