お問い合わせ

役員退職金は、不相当に高額な部分は損金不算入とされています(法人税法34条2項)。また、なにが「不相当に高額か」については、業務従事期間、退職事情、同種・類似規模の法人の支給状況等を勘案することとされています(法人税法施行令70条)。同種・類似規模の他の法人と比較する場合の方法として、東京大学名誉教授の金子宏先生は、裁判例を参照のうえ、次のように述べておられます(金子宏『租税法〔第15版〕』(弘文堂、平成22年)312頁)。

「・・・主要な方法として、次の2つの方法がある。

(1)功績倍率法 役員に対する退職給与が支給されている他の法人で、当該法人と業種・事業規模および退職した役員の地位等が類似するものを選定したうえ、その功績倍率(退職給与が役員の最終月額報酬に勤続年数を乗じた金額の何倍にあたるかというその倍率)に当該役員の最終月額報酬および勤続年数を乗じて算出する方法であり、この中には、さらに、平均功績倍率法(類似法人の功績倍率の平均値を用いる方法)と最高功績倍率法(類似法人の功績倍率の最高値を用いる方法)とがある。・・・

(2)1年当たり平均額法 (1)と同様の他の法人における退職した役員の勤続年数1年あたりの平均退職給与の額に当該役員の勤続年数を乗じて算出する方法。・・・

この2つの方法のうち、納税者に有利な方法を適用すべきであろう。」

さて、他の法人の支給状況の調べ方ですが、月刊誌「スタッフアドバイザー」にて特集が組まれることがあるほか、政経研究所が『役員の退職慰労金』という書物を毎年出しておりますので、こちらを参考にされるとよいかと存じます(後者は33000円で、やや値が張りますから、図書館を利用されるとよいでしょう)。

役員退職金については、役員退職慰労金規程を設けることがよく行なわれています。規程どおり支払ったからといって、税務署から否認されないというわけではありませんが、「お手盛り」ではないことを主張するための材料にはなります。

なお、所得税について、退職所得は、退職金から退職所得控除額をマイナスした後の金額に1/2を乗じて計算します。
平成23年改正で、役員としての勤続年数が5年以下の場合にはこの1/2を乗じることができなくなる方向で審議されていましたが、見送られました。平成24年税制改正大綱によると、引き続き検討されるとのことです。

一覧へ戻る